HALO episode2

2017年8月27日。
僕らは富士山の頂上から、下山している途中。神秘的な自然現象を目にした。
既にほとんどの体力を使いきり、この爆笑を続ける両膝を休ませるため、8合目あたりで腰を下ろした。その目の前に、太陽の周りに大きな虹色の輪がかかっていた。

「大ちゃんが、富士山の山小屋で働いてんだって!ゆうたと登るんやけど、誠也くん一緒に登らない?」
そう声をかけてきかたのは、オーストラリアにワーキングホリデーで行ってる時に出逢った、"広島出身のヤンキー"ミクからだった。
ミクと初めて会ったのは、2014年オーストラリアの畑仕事をしていた、小さい街のスーパーの肉コーナー。
僕と同じレタス畑で働いていた、ゆうたくんのシェアメイトで、出会う前から名前はよく聞いていた。

僕が、オーストラリアへ行ったのも、仲間と事業を起こす為の経験値と、うっかりステキな仲間が出来たらと思って行った。
作りたい物のイメージは常に頭の中にはあったので、ミクとスーパーで会った時、彼女は僕の思い描くイメージにドンピシャな人だと思った。
ただミクは帰国後、既に内定している就職先があった。
その話を楽しみに語る彼女の姿を見て、僕はこの想いを飲み込んだ。


そんなオーストラリアから3年。
同じ街で出会っていた大ちゃんに会いに、そして、頂上から御来光を見る為に、計5人で日本一の山へ向かっていた。

「富士山」

日本人なら誰もが一度は登りたいと思う山だろう。
登山への興味もそんなにない僕も、富士山にはいつか登りたいと思っていた。
ゴールデン街のお店「花の木」を訪れてから、数日。
未だなんの手応えもなく、3人でどうすべきか、議論を続ける事しかできていない。
今、色んな思いが空回りしている。
良いタイミング。
一度、日本一高いところから、この世界を感じてみたくなった。
体力への不安を除いては楽しみしかなった。

案の定。
準備はそこそこ完璧にして来たが、体力だけは誤魔化しが利かなかった。
一歩一歩が重く、ゆっくりと意識していても、息は勝手に上がる。
何度も何度も立ち止まり、腰を下ろした。
唯一の救いは、周りを見れば、雲が掴めそうなくらい近くにあるこの景色と、5人の仲間とのふざけ合いだ。

早く9合目にいる大ちゃんの所まで行きたい、頂上からの御来光が待ち遠しく思った。それが遠ければ遠いほど、高ければ高いほど、長く、重く、時に諦めたくなる。
「きっと人生も同じなのかもしれない」
自分で思い描いた夢や目標、生きたい人生が馬鹿げているほど。
自分の一歩がより小さく感じ、だからと言って急いだ所で、体力はもたない。

大丈夫。焦らず、着実に行こう。
景色や、仲間との時間を大切にしながら。
そんな人生と登山を照らし合わせる事で気を晴らしながら、ひたすら登った。

「おつかれさーーん。」
どっから見ても、誰が見ても、一目でこの人は優しい心を持つ人だと分かるステキな笑顔の大ちゃんが、大きく手を振っている。
走って飛びつきたい気持ちになっても、体はそうはいかなかった。
「久しぶり。元気?」
「もちろん元気、誠也くん来てくれてありがとう。」
ゆっくりと近づき、そして大きなハグをした。
不思議と疲れが吹き飛ぶ。

小さな山小屋には多くの人が居た。
案内された部屋は、5人が横一列にびっしり並んでギリギリのサイズだった。
それでも、身体を休ませられるこのスペースに感謝しかなかった。

御来光に間に合うようにと、午前2時に起床。
外に出ると、ダウンが必要なほど、寒かった。
既に、多くの人が列になって登山を開始している。
果たして、僕らは何番目なのだろうか。
真っ暗な空に。登山者のヘッドライトの動きと、数え切れないほどの星が浮かんでいる。
徐々に周りが明るくなってくる。
御来光に間に合うのか?
そう思っても、この前にいる人達のペースに合わせるしかない。
確実に目で捉えられる様になった頂上。
ゴールまでどれほどの距離があるか分からない時と、はっきりとゴールの距離が把握できる時とでは、不思議と足の軽さが変わった。
先の見えない不安や、自分の心の弱さに、エネルギーと意識が奪われていただけなのか、この身体にはまだ力が残っている。

無事、頂上に着いた。
しかし、凍えるほど寒い。
そして、なによりもこの強風が動きを止めた身体に突き刺さる。
それでも、道中の人から想像した頂上よりも混雑はしていない。
御来光にも間に合った。
見渡す限り雲海に囲まれている。
その雲海の中で、少しずつ、そして確実に、明るくなる場所がある。
間違いなくあそこから姿を現わす御来光に胸が膨らむ。

ゆっくりと登る御来光に自分達を重ねる。
このモヤモヤした、現状と想い。
それがこの雲海なのだとしたら、その中で自分達が太陽となり、この世に光として顔を出す日が来れば、必ず人々をステキに照らす自信はある。
その場所とタイミングさえ分かれば、、、
直視出来ないほどの光を放ち始めた太陽のお陰で、次第と身体は暖まり。
さっきまで見えないでいた、富士の頂上もくっきりと見えてきた。
自分がいる場所が、太陽のお陰ではっきり分かる。

存分に頂上を満喫し、9合目で大ちゃんとの別れを済ませた後も、僕らは下山を続けた。
下りはまた、登りとは違う辛さがある。
勝手に勢いがつくのを抑える為と、足元が滑らないようにする為に、膝が笑い出す。
そんな、慣れない下山のコツをつかもうとするうちに、8合目に着いた。
登りとは、段違いの速さで距離を進めた。

8合目。
下山は体とは裏腹に、心には少し余裕が出る。
その辺に転がる大きな岩に腰を下ろし、ふと顔を上げると、そこに今まで見たことのない景色が現れた。
さっき雲海から生まれた、太陽の周りに綺麗な虹の輪がかかっている。
僕は、はしゃぐ仲間を横目に、心は初めての感覚に襲われていた。

「これだ」

心の中にかかっていた、靄が晴れていくのを感じる。
ずっとふわっとしていた。
夢を語るにしても、まだ何もなしていない自分の言葉はどこか安く、綺麗事だと自分でも感じる。
やりたい事や、伝えたい想い、表現したい空気。
表現したいものは自分の中ではずっと有りながら確かなものは、いつも回りくどく、グチャグチャになった。
初めて見た縁を描くその虹の輪は、ずっと探していた、それに見えた。
天に「あなたの想う、作りたいものとは、これの事でしょ?」そう言われてる気がした。

「この現象を僕の生きる世界にも起こそう」
そう決めた。


最後に、富士山での体験が終わった後、当時僕がメンバーに送ったLINEの内容をそのまま貼り付けようと思います。
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the good waves

第一号店
屋号
「HALO」
ハロは、太陽の周りに虹の輪が出来る現象の事をいう。

富士山を登ってる時、雲が波の様に見えた。
風で流されながら形を変えて、波の様に動いてた。

頂上では、その雲海の中から、力強く光る太陽が姿を現し、富士山にいるほぼ全ての人がその姿に見惚れた。

そして、頂上から下ってる時、HALOに出会った。
太陽が真ん中で力強く輝き、その周りに虹が輪を作り、そこを雲が風に身を任せ流れていた。

俺たちは太陽。
そして、そこに集まる人達と共有、共感、共鳴を深めて。
それぞれの人生に良い波を生む。
その人々がそれぞれに吹く風に身を任せて人生を生きる。(雲の様に)
そして、どこかで偶然では片付けられない出会いの輪が広がっていく。

人生はオリジナルシナリオ。1人1人色は違う。

俺たちが放った光(俺たちがこの世に生む全て)に触れた様々な色を持つ人が繋がり、俺たちの周りに虹色の輪を作っていく。(コミニュティ)
それを、より多く、より大きく。より濃く。より素敵に。

HALOはHELLO.ALOHAに少し響きが似てて、挨拶の様に言いやすい。

それに、Tシャツとかキャップ、サンダルなんかそうゆうグッズにした時にもなんだか、いい感じのロゴになりそう。

どうかな。

この名前とイメージを元に、
場所。
物件。
サービスをまずは作ってみない?